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番外編・彼の毒親

夫の両親も、それはもう酷い毒親だったようだ。
両方とも既に亡くなって久しいし、彼のプライバシーでもあるので、ここに書こうかどうしようか、少し考えた。

でも、やはり書こうと思う。
「それ」がどんなことであるか、わからずにいるたった一人の誰かに、もしかしたら届くかもしれないから。
「それ」がどんなに酷いことなのか、証言を残しておきたいと思うから。

彼の父親は、紛う方なき暴力系毒父だった。
彼が幼い頃から容赦なく彼を殴り飛ばし、怪我を負わせた。
救いだったのは、同居していた母方の祖母が、彼の味方になってくれたこと。
そして、父親の勤め先の社長の奥さん、という人も、虐待を見兼ねて社長である夫に注意を促し、夫婦揃って父親を呼び出し、懇々と説教をしたことなどもあったらしい。
彼は確かに学生時代は荒れたこともあるというし、被虐待児後遺症のような側面を今も持ち合わせているが、子どもにはとても優しく、おおらかな面を持つのは、元々の気質の他に、「他の大人に庇われた」という経験を持っているからだろう。

母親は、別の意味でまた、酷かった。
情緒不安定で、あるカルト宗教にはまり、彼と弟にもその信仰を強要した。
その頃にはもう、庇ってくれる祖母も亡くなっていたし、父親は海外出張が多かったので、普段は母親が全てを仕切っていた。

そのカルト宗教は、母親の情緒不安定を鎮めるどころか助長させた節がある。
まだ中学一年生の彼と、小学四年生の弟だけを残して、母親は時々、黙ってふいっと家を出たまま、何日も帰らなかったりした。もちろん、食費などのお金も残さずに。
後で聞くと、「すべてのことに我慢ができなくなって」友達の家に転がり込んだりしていたらしい。

他のことも、どれもこれも戦慄するようなエピソードだが、私が一番驚愕した奇癖がある。

何故かその母親は、彼が小学校高学年になった辺りから、彼の私室の屑かごに、使用済みの生理用ナプキンを忍ばせるようになったのだ。
古い家なので、トイレは一階に一つ。母親の部屋も、浴室も一階で、彼の部屋は二階。どう考えても、着替えついでなど、苦しいなりにも理由のつけられるような行動ではない。
しかも、それをする時は、気味の悪い几帳面さで、一度に一つ、それも大量に血の付いたもの、と決まっていた。

考えてみて欲しい。

ある時、小学生の男の子が、自分の部屋でふと、何だかイヤな臭いに気づく。
何だか覚えのある、イヤな臭い。
こんなのと似た臭いを嗅いだことがあるのは、トイレだったような気がする
でも、なんでこの部屋でこんな臭いが?
気のせいかとも思うけれど、臭いは消えない。
むしろ、段々強くなるような気がする。
仕方がないので、探してみることにするが、臭いの元は中々特定できない。
あちこち探して、やっと見つけたのが、屑かごの中に、他のゴミや紙屑に埋もれさせるようにして突っ込まれていた、黒ずんだ血でベットリと汚れた、酸化した経血の強烈な悪臭を放つ、使用済みの生理用ナプキンなのだ…。

その衝撃は、想像に余りある。

当然彼は母親を問い詰めるが、母親はしらばっくれるだけ。
その得体の知れない行為が、何度も何度も繰り返される。
それが酷く不自然で、歪んだ行為だと何となくわかるだけに、誰にも相談できない…。

それに、時は三十年も前。
たとえ彼が勇気を奮って誰かに相談したとしても、子どものこんな訴えにちゃんと耳を傾けられる大人は、一体どのくらいいただろうか。
下手をすれば、事実は捻じ曲げられ、彼が悪いことにされてしまい、虐待そのものの傷にさらに追い討ちをかけられ、何層倍も傷つき、恨みのマグマを抱え込む羽目になっていたかも知れない。
それも多分、何となくではあっても、子どもには予想できただろう。

(私がこの話を信じるのは、彼を信用しているというのもあるが、この家に住むようになって、汚部屋・ゴミ屋敷と化していた彼の母親の部屋や、他にも共用スペースを片付けている間に、信じがたいモノをいくつも発見したからでもある。
その中には、脱衣所にある棚の奥に隠すように突っ込まれていた、使用済みの尿漏れパッドなどもあった。)

その当時の彼の気持ちを思うと、胸が苦しくなる。
それを打ち明けてくれた時、何度も言ったけれど、本当は、その当時の男の子にこそ聞かせたい。

あなたは何も悪くない、お母さんが、疑いようもなく、異常だったんだよ。
辛かったでしょうね…。

そして、その母親の胸ぐらを掴んで、罵倒してやりたい。
「この腐れババァ、自分の息子になんてことしやがる!!!」、と。

もちろん大人の対応としては、そして被虐待児を救う方法としては、目も当てられない悪手だが。

それでも、子どもに、味方がいることをわかってほしい。

彼には色々問題もあるが、女性不信にならず、女性に暴力をふるうようにもならなかったのは、奇跡だと思う。
どんな毒親でも枯れさせることのできない資質のようなものが、きっと子どもには、生れながらに備わっているのだろう。


追記。

その奇行の犯人が、当時小学校低学年だった彼の弟であった、という可能性も、なくはない。
もしそうだとすると、意味合いはだいぶ異なって来る。
その後何年も、そんな小さな子どもを異様な行動に走らせるような原因がもしあったとすれば、それはやはり、保護者によってフォローされ、解決されるべきだったろうが…。


by Reimei34 | 2018-10-01 00:00 | 毒親

鬱、ひきこもり、毒になる母などについての 言葉にするのが難しい痛みの記録。


by Reimei34